どこにもない

いえーい

sore

ただそれはそこにあった。誰に存在を肯定された訳でもなくただそこにあったのだ。冬空の抜けるような澄んだ空気、日常に溶け込んでいく悲鳴、楽園のような地獄、生暖かい痛み、死んでいるような錯覚、淘汰された思考を持つ人間に対する劣等感。彼と私の繋がりなんてそんなものばかりだった。だった、というのも今現在彼と私の間には関係性というものはほぼなく、それは無に等しい。15の時。思えば彼は、狡くて弱くてクズでどうしようもない人間だった。酒に飲まれ自分を蔑み許された気でいた。堕落と罪に縛られいつも許しを望むフリをした。救われたいフリをしていつも逃げていた。本当はどこまでも堕ちていきたい癖に。そんな状況に安堵を覚えていた癖に。彼はいつも死にたがっていた。そして私は彼と死にたかった。どうしようもない彼がどうしようもない私にとって唯一の楽園だった。彼は私を肯定し、私は彼を肯定した。猜疑心と承認欲求で穴だらけの心はそんなものでは埋まらなかったがそれでもよかった。決して特別な存在でもなくそこに在るだけ、気休めな関係が心地よく、全てだと。そして私たちは逃げた。どこまでも逃げた。堕ちてゆく堕ちてゆく堕ちてゆく堕ちてゆく堕ちてゆく堕ちてゆく堕ちてゆく堕ちてゆく堕ちてゆく堕ちてゆく感覚どうしようもなく笑う。その貧弱な心に触れ、キスをし、貪り、気が触れる。私は彼を愛していたの。