どこにもない

いえーい

あの海のように

あの子は海のようだった。僕自身どちらかといえばどん底に近い人間であるがそれでもなお、あの子は海で在り続けた。15にしてあんな辺鄙な場所に足を運び僕の音楽を聴き酒を飲んで帰って行った。はっきり言って僕はロリコンではないし、どちらかといえば年上の女性が好きだ。無論あの子も例外ではない、はずだった。僕はありったけの下心を排除しあの子に接し、慰め、促した。あの子は優しく、綺麗で、無能だった。傷付き、自ら汚れを被りたがった。埃まみれの骨董品みたいに、ただそこに在るだけ。そして僕ではない僕を好きだと言った。僕は僕であり僕以外の何者でもないのだが、僕は僕ではない。いつまでたっても僕にはなれない。僕は自分が分からなくなっていた。あの子はそんな僕の偶像を好きだと言ったのだ。変だ、とても変だ。理解できなかった、したくなかった、自分を分解しバラバラにするのがたまらなく怖かった。だから偽った。2人でならどこまでも逃げれる、それは簡単なことだった。僕は正直当時の生活から解放されるなら何でもよかった。厳密に言えば、「生活」することに疲れてしまった。いつか終わるこの時間を待つことが出来なかった。そして自分の限界のようなもの、詰まる所の終着点のようなものを瞬間瞬間で感じ、いわばそれが本質であってその延長線上の上にも手前にも何もないことだけを理解していた。僕は弱かった。不安定だった。グラついていた。それでも愛して欲しかった。怠惰だ、惰性だ、エゴイズムだ。堕落した心が叫んでいる。ここから引きずり出される前に、早く僕を殺してくれよ。