どこにもない

いえーい

含み含まれ咀嚼しあう関係わたしたちは間違いだらけの選択を選んでは消し、消しては選んだ。あいつはいつも選択を焦るように口を動かしていた。自分の中に誰かが入ることを酷く恐れていた。しかしそれはこの世界のルールに反している。含み含まれることではじめて他者に認識されるのだ。それができないあいつはいないのといっしょだ。ここにいてもいない、いないのに存在する、それがあいつだった。それでもあいつはひたすらに口を動かしていた。だからわたしはあいつを見下していた。惰性に溺れるあいつをばかだとおもった。ひとは、言いたいことを言える立場ではないのだ。ただただ違和感だけが腹の中に溜まってゆく。ぶくぶくと腐った毒を吐き出しながら息をしている。いやになるな。いやになってばかりだ。毎日クソだが幸せじゃないわけではないのだ。それはわかっていてほしい。ふと鏡に映る顔を見ると、それはあいつと同じ顔をしていた。